msn産経ニュースより引用
拉致問題 帰国を待つ家族の声を届ける
7月4日のJR千葉駅前。立っているだけで汗が吹き出す暑さの中、「拉致濃厚」とされる特定失踪者、古川了子さん(60)=失踪当時(18)=の姉、竹下珠路さん(71)はマイクを握り、「解決に向かうよう、署名をお願いします」と呼びかけた。
この日は、北朝鮮の拉致再調査開始からちょうど1年。だが、その数日前には北朝鮮が政府に対し、1年をめどとしていた調査結果の報告を「延期する」と通告していたことが明らかになっていた。
昨年6月に竹下さんを取材した際には「これまでにない大きな局面。今前に進まなければ解決はない」と話すなど、期待も大きかった。だが、それは北朝鮮の勝手な都合で裏切られる形となってしまった。
竹下さんは毎月1回、「北朝鮮に拉致された日本人を救出する千葉の会(救う会千葉)」のメンバーらと同駅前で署名への協力を呼びかけている。昨年夏に取材したときには「解決に向けて動きそうですね」と声をかける人もいた。だが、進展がなくなると「世間の反応も薄くなってしまった」(同会の中村実代表)という。
このように拉致問題の早期解決を求める世論の高まりを妨げることが、北朝鮮の本当の狙いかもしれない。今月下旬、竹下さんは産経新聞の取材に対して今年を振り返り「期待した分、むなしさが残った。年月ばかりが過ぎていく」と悔しそうにつぶやいた。
こう記しながら自分も夏以降、竹下さんや救う会千葉の活動の取材に行く機会が減ったことを猛省している。拉致問題の解決には政府間の対話も重要だが、それ以上に「拉致被害者全員の帰国以外は絶対に許さない」という強い姿勢を国民が示すことが不可欠だ。そうした世論を喚起するためにも、大切な家族の帰国を待つ竹下さんら拉致被害者や特定失踪者の家族の声を発信し続けていきたい。(大島悠亮)